美園どうぶつ病院 田中 嗣彦院長にインタビュー
これでもかってぐらい、思いっきり可愛がってください!
先生はどのように獣医さんになられたんですか?
実は大学を卒業してすぐ臨床医になった訳ではないんです。
元々お酒の会社で会社員だったんです。
そんなご経歴の先生は初めてです(笑)
その会社には医薬品の研究員として就職したんですが、お酒の会社だったので最初は営業もしていました。
でもそれは凄くいい経験でしたね(笑)
「この病院にうちの子を就職させたい!」って書き込みを見たのですが!
知らなかったです。
でも嬉しいですね(笑)
僕は飼い主さんに好まれるか嫌われるか激しいと思います。
どこがですかね?
ある意味、しつこいんです(笑)
獣医さんは「しつこさ」がないと病気を治せないので、それはちゃんと理解されないと、嫌味に聞こえたりします。
動物の命とか病気の受け止め方は飼い主さんによってかなり違います。
折角病院に来ても、大きい病気だと言うと「良くしたい!治したい!」という方から、「もういいです!諦めます!」という人までいます。
そうですね。
「最後だから病院に連れてきた」って言う飼い主さんもたまにいらっしゃいます。
今日いらしたこのきっかけが、飼い主さんの中でもう最後になっている。
そういう方とお話しする時、診察だけで一時間半から二時間ぐらいかかります。
数を回してバンバンこなしていくものではなく、重い病気を飼い主さんにしっかり理解してもらうことと、目の前の動物の体のことを我々が同時に理解して進めていくにはある程度時間が必要になります。
そんなつもりで来てないのにって思う飼い主さんもいらっしゃるでしょうね。
そうですね。
ワクチンだけを打ちに来た方が、鼻先からシッポの先まで診られるのが心地いいという人ばかりではないですね。
そういう方にしたら僕はしつこいと思われているんじゃないですかね(笑)
飼い主さんの気持ちを察するのは難しいですね。
その病院の専門が分かればお互いにいいんですけど(笑)
今、専門の病院も出来ていて難しいことに対応している病院もあれば、我々のような町医者もあります。
予防だけに特化した病院も出てきています。
飼い主さんが選べるわけです。
最近、猫専門の病院もありますよね?
猫専門もありますね!
患者さんの割合で言ったらうちも猫が多いですね(笑)
そうなんですか。
僕自身、犬や小動物、ネズミとか扱うのが多かったんですが実は猫だけは機会が少なかったんです。
なので勤務医の時よく院長に猫を診せられていましたね!
機会が少なかったのはたまたまですか?
実は学生時代からあんまり好きじゃなかったんです(笑)
猫アレルギーでしたし・・・
その辺が院長にばれてたんでしょうね!
こいつは猫駄目だ!なんて。
分かるもんなんですね。
「本当に病院やるつもりならちゃんと猫もやりなさいって!」
院長に言われていましたから(笑)
それで猫を率先して診るようになったんですか?
それもありましたが、まず猫を育ててみようと。
ヘソの緒が付いているような子猫を保護して自分で育てたんです。
先生が拾ってきたんですか?
患者さんが「猫が捨てられていた!」って保護してきたんです。
買い物袋に4頭入って、木にぶら下げてあったっていうんです。
じゃあ、僕がもらい受けるつもりで診るからって。
生まれて間もない子なので3,4時間おきにミルクあげてました(笑)
そのうち一匹は僕の家で他はみんなもらわれていきました。
初めての子が乳飲み子で大変でしたね。
大変でしたけど飼ってから風向きが変わりましたね!
猫は犬と違うって実感してわかってきて、「あら!猫ってかわいいじゃん!」ってなったんです(笑)
ガラッと変わりましたね(笑)!
そうですね(笑)
獣医になってからかなり経ってからですけど・・、犬とは全然違うものとしてやらないといけないなと感じました。
それから猫の患者さんが増えた気はしますね。
診察される猫にも伝わっていたりするんですかね?
良く言われるのが、「この子触れません!」「爪切りも出来ません!」って、他の病院で言われたのにここの病院だと触らせてくれるし、診察も出来るんですって言ってもらえます(笑)
さすが猫!
分かるんですね。
猫が不得意かなっていう看護師さんが猫を扱うと暴れるんですけど、好きな看護師さんだとそれまで怒っていた猫もピタッと大人しくなって診させてくれるんですよ(笑)
昔から猫と暮らしていた人とか?
小さい時の環境もあるかもしれませんね!
でも不思議なことに、猫が得意って言う看護師さんは、実は今まで猫を飼ったこともないんです。
凄く猫は好きなんだけど環境が整わなくて飼ったことがないんですよ。
本当に不思議ですよね(笑)
そうですね。
相手を緊張させない能力っていうんでしょうか、人間に対してもそういった能力が長けているんでしょうね。
たぶん一緒に働いている人も癒されていると思います(笑)
自分はスタッフに恵まれたなと感じる瞬間です。
診察する上で一番大事なことって何ですか?
飼い主さんから「答え」を教えてもらうことだと思っています。
コミュニケーション能力をつけていくのが医療従事者として一番必要なことだと思います。
うまく話せる飼い主さんだけじゃないですからね。
結局それは聞き方なんです。
我々が「ん?」って疑問に感じることを具体的に「こういうことがありますか?」と聞くと、実は会話の中から答えがすでに導かれちゃうことってあるんです。
それが、「最近元気ですか?」「はい!」では終わっちゃうんです。
それだとわからなきゃいけないことがわからないんです。
なるほど、そうですね。
病院の前を散歩で通りかかった飼い主さんに、仮に立ち話でも、「最近どうですか?この前の治療したところは?」、なんて聞くこともとても大事でとても貴重なんです。
何気ない会話が大事ですよね。
実際に、「え?それっておかしいよね!」って看護師さんが感じて、「じゃあ時間ある時に寄ってね!」って言って、来て頂いた時に大きな病気を見つけたこともありました。
小さいきっかけを見逃さないってことですね。
彼女たちが飼い主さんと話してその言葉から大事な情報を得てくれているというのが凄い大きな力になります。
病院の最前線は看護師さんだ!と感じることも多くあり、彼らには非常に感謝しています。
ネズミを飼われていたいうことですが?
そうなんです。
大学の時に研究室で自家繁殖させて実験していくネズミでした。
中には体に障害をもって生まれてくる子もいるんです。
そういう形で生まれてくると、ネズミって兄弟同士でも傷つけてしまうのですがその兄弟は違っていたんです。
兄弟みんなで助けるというか、おしっこして汚れたところから離してあげるために、1,2匹でズルズルって引っ張ってあげたりして。
しっかり社会がありますね。
そうなんですよ。
ちゃんと社会性があって、兄弟の絆があって凄いなぁって思いましたね。
僕らも命を助ける為に大学で勉強していたのに、「生まれる亡くなる」の生命のイベントにちょっと慣れちゃっているところがあって。
そうですか。
それでその子はどうなったんですか?
そういうのに慣れたくないなっていうのもあって、この子の一生を兄弟に代わって、今度は僕が世話してみようかと一緒に暮らし始めました。
名前は「しろ」にしました(笑)
生活して考え方も変わりました?
生活していく中で、動物の命も人の命も同じ命で何も違わないと、学生の時に気づかせてもらいましたね。
獣医さんって、生や死の出来事の中で学ぶのではなく教えられるんです。
強烈に覚えている出来事はありますか?
臨床の世界に入って初めて本格的に担当した子が、獣医として忘れられないですね!
どんな思い出ですか?
まだ臨床医になって2ヵ月も立たない時に来た糖尿病のねこちゃんです。
状態は悪く、おじいちゃんおばあちゃんが飼っていたんです。
糖尿病の子は、インスリンの注射を打って維持していくのですが、おじいちゃんおばあちゃんが注射するのが難しかったので、「さてどうするか?」って感じでしたね。
そうなんですか。
肝臓も悪かったので、3か月ぐらいした時に「動かなくなっちゃった」って連絡がありました。
前日まで毎日病院終わってからそのお宅には行っていたんですが・・
一番最初の子でしたからね。
そうですね。
「今日ご飯食べた?」 「食べた食べた!」なんて会話してたんですけど。
本格的に担当した一番最初の子だったので思い入れも大きかったんです。
それと、会社員をやっている時に実は研究所で「糖尿病の薬」を作ってたんです。
それはより一層、気に掛かりますね。
そうなんです。
開発に携わっていて、糖尿病をなんとかしたいってそもそもあって、何の因果か一番最初の子が糖尿病の子でしたから。
そうですね。
御飯が食べれるようになったことがとても嬉しいとか、自分で歩いておしっこにいったよとか、こういうことで獣医って感謝されるんだなって初めてわかりました。
本当に素敵ですね!
僕は病気を治さなきゃいけないんだって思っていたけど、やらなきゃいけなことってそれだけじゃないんだって気がつきました。
飼い主さんの「どうにかしたい」っていう思いも和らげるということが大事なんだなぁと。
そうですか。
でもその時は「俺やっていけないかも。。。」ってかなり落ち込んでいたんです。
そしたら、数日ぐらいしたらですかね。
おじいちゃんおばあちゃんが病院に来ていただいて、「田中先生、本当に先生に診てもらって良かったよ」って言って頂いて(笑)
凄く嬉しいですね(笑)
本当に嬉しかったです。
自分の価値観だけで、これが出来たから良い!悪い!ではなく、人に感謝されるということは実に様々な形があって、そんなふうに病気と動物達とかかわっていけるなら、自分も臨床獣医師として頑張っていけそうだなって思いましたね!
それも僕は学ばせてもらったんです。
これから飼おうとしている人へメッセージをお願いします!
端的に言うと「思いっきり可愛がってください!」
これでもかってぐらい愛情をそそぐと、これでもかってぐらい返してくれますから(笑)
愛情をかけた分だけ甲斐があるのが動物たちかなぁって思います。
シンプルで分かり易いですね!
あとは、犬猫は「人ではない」って理解していただいた上で一緒に生活して欲しいですね。
どうしても擬人化してしまって、人の子であればこうしたら喜ぶであろう!とか、人の写しとして犬猫を見ちゃう人がいます。
違う生き物ですからね。
そうですね。
それが、犬猫の負担になってしまいます。
こういうことしたら「喜んでいるんだよ」とか、「嫌がっているんだよ」と言うのは、動物病院かしつけの先生から聞くべきだと思うんです。
気軽にいらしていただいて、病院にいる犬や猫たちと触れ合うのがいいと思います。
ここにはいつでもいますから(笑)
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犬猫を飼う前に!
保護犬、保護猫を家族に迎えるという選択肢を!
2015月07月病院の情報
病院名 | 美園どうぶつ病院 |
院長名 | 田中 嗣彦院長 |
住所 | 〒336-0964 埼玉県さいたま市緑区東大門3-2-5 |
最寄り駅 | JR武蔵野線東川口駅 徒歩15分 |
電話番号 | 048-878-6101 |
診療時間 | 午前9:00~12:00 午後16:00~18:30 |
休診日 | 水曜日 ※当院患者さまに限り、急患も対応いたします。 |
診療対象動物 | 犬・猫・ウサギ・ハムスター・フェレットなどの小動物 |
その他 | トリミング、送迎(要予約) |