ジョイ動物病院 九鬼 正己院長にインタビュー
「飼う」ではなく、「家族に迎え入れる」なんです!
獣医になったきっかけを教えてください。
「子供の頃から動物と生活をしていて!」
「小さい時から獣医さんになりたいと思っていました!」
という話が大体多いと思いますが、私はそこから全く外れます(笑)
どんなことなんですか?
元々、動物であるとか医学的なものであるとかサイエンス全般が好きでした。
宇宙飛行士になりたい!ブラックジャックのようになりたい!とか、パイロットになりたい!とか、みんな言うじゃないですか?それと同じです。
私にはとても慕っていた叔父がおりまして、その叔父にドーンと背中を押されたんです。
叔父の言うことだから間違いないだろうって。
叔父さんの後押しですか。
そうです。
その叔父は昔、軍隊にいたんです。
昔の日本軍は馬をとても大事にしていて。
陸軍には陸軍獣医科があって、その獣医は大事な馬の健康をあずかる「偉い人」だったということなんです。
そこに叔父がとても尊敬していた人がいたらしいんです。
そうだったんですね。
それで獣医学部に合格した時、叔父にその報告をしたら「絶対そこへ行けって」言われたんです。
資格が与えられ、一生その職に就くことが出来て、尚且つ多くの人達と分かち合うことが出来る!
そんな職業は多くはないぞ!絶対そこへ行けって!言われたんです。
尊敬する叔父さんの一声がきっかけだったんですね。
わんちゃんねこちゃんを飼う前に注意しなきゃいけないことは何ですか?
よく聞かれますが「飼う」という付き合い方より「家族」だと思うんです。
飼うという目線は人間目線なんです。
同じ目線であるべきということですね。
そうです。
「家族として迎え入れる」となると対等になるわけですから、家族全員が命に対して責任を持たなければいけないって意味合いで、日本語として受け入れやすいのかなと思っています。
つまり「家族として迎え入れる」なんです。
そうですね。
同じ目線、同じ生き物、同じ命として考えれば、それを放棄、遺棄なんて絶対に出来ないんです。
だって自分の「親」、「子供」を捨てるなんて出来ないでしょ!
なので命を粗末にするという感覚が出てこなんです。
その通りですね。家族を「捨てる」とはなりません!
例えば欧米に関して言うとドイツは殺処分ゼロ、イギリス、アメリカもかなり少ない。
では何故、このようなことが出来るのか?
同じ人間、同じ先進国で肌の色が違うだけで、文化・宗教感の違いはありますが、ドイツに出来て日本に出来ないことはないと思っています。
確かに!
その違いは何ですか?
そこで考えた時に、欧米諸国はやっぱり「ファミリー」「家族」として、わんちゃんねこちゃんのことを考えているんです。
それが自然の考えであるとは素敵ですね。
ただそうでない人も、もちろんいます。
社会的に過ちを犯した場合には、厳しく罰せられます。
普遍的な価値感であって人間の法律と同じレベルで子供の頃から教わります。
子供の頃からですか。
そうです。日本には仏教など神道的な宗教感があるわけですから、命を粗末にする民族ではないわけです。
にも関わらず、年間20万頭も殺処分がされています。
悲しすぎますよ。
家族の一員として考えた時に、「私は家族の一員をいらなくなったからここに来ました」とは言えないでしょう!
でも「飼ってる」になれば、「もう飼えないから」という理屈になるんです。
具体的にどうしたら良いのでしょうか?
大きな「意識の転換」をすれば殺処分を減らすことが出来るのではないかと思っています。
それは私達、獣医師の努めでもあります!
海外と日本の違いを実感するようなことはありましたか?
はい!ありました。
前職の広尾の病院での出来事になります。
日本人の感覚と欧米人の感覚がこんなにも違うものだなぁと思いました。
日本人は同じような顔、感覚を持っているし大体は「阿吽の呼吸」でわかるんですよね。
でも欧米人というのは全然違うんです。
例えば?
例えば動物に対する見方も違います。
彼らは「命を受け止める大切さ」というものはとても重要だと思っているのですが、この子がもう治らない苦しんでる状況になった場合はすぐに「安楽死」を選択します。
それはなぜですか?
動物達は今の苦しみから「逃れる術」を持っていないという考えからなんです。
意思表示が出来る我々人間とは違い彼らはそれを受け入れることしか出来ない。
であれば、この苦しみから解放してあげるのが人間の役目だろう。
最後の家族に対しての愛情だから楽にしてあげてくれと。
日本人とは真逆ですね。
そうですね。
日本人はどちらかというと、最後まで一生懸命介護して苦しみを「分かち合おう」とする。
欧米人からするとそれは人間のエゴになるんです。
エゴですか?
もっと表現がきつい人になると、「お前それは変態だろう」
「そんなに苦しんでいる様をそんなに見たいのか?」
「そんな辛い思いを毎日毎日与え続けるのか?」という意見もあったりします。
価値観の違いですね。
でもずっと付き合っていると、だんだん日本のことを理解してくれます。
価値観の違いを理解してくれるんです。
彼らはそんな風習もちゃんと教育を受けてきています。
亡くなった動物はどんな存在になるのですか?
he(彼) her(彼女)でもなくit(それ)になります。
葬儀などの風習があまりなく、日本の焼いて骨拾って持ち帰るの意味がわからないと言います。
ところが長いこと付き合うと変わるんです。
考え方が変わるのですか?
そうです。
「最後に骨にして欲しい!」「桐の箱に入れてあげて!」と涙流しながら言われたこともあります。
日本にいて日本人と付き合っていくとやっぱり、コミュニケーションが出来てくる。
分かち合えないことってないんだなと思いました。
そうなんですね。
肌の色、瞳の色、価値観、宗教感などは関係ないんです。
同じ人間として付き合っていけば分かち合っていけるという貴重な体験をしました。
家族として暮らせればお互いハッピーですね!!
そうなんです。
なのでお金を出して「買う」も、飼育する「飼う」もないんです。
家族の一員として一緒に生活をしていく。
そうすることによってその家族はものすごくハッピーになれるんです(笑)
犬と人間は長い時間一緒にいたんですよね?
そうなんです。1万年もの間です。
じゃあ、なんで犬は1万年もの長い間人間と生活してきたのか?
なぜ、人間が犬と一緒に生活してきたのか?ではなくて、なぜ、犬が人間から離れなかったのか?
つまり双方向から見なければいけません。
そうですね。
人間は無意識のうちの万物霊長というふうに、人間目線でしか物事を見れなくなりました。
1万年もの長い時間があったわけですから、犬はいつでも人間の側から離れることが出来たんです。
なぜ今も一緒にいるのですか?
それは、犬も人間といることに喜びを見出しているからなんです!
そうでなければ離れているはずなんです。
人間のDNAは犬という生き物を絶対に手放すことが出来ないようになっているんです。
遠い昔からお互いに必要として一緒だったんですね!
そうです。
だからそこに絆が出来ます。
目に見えない絆が出来るんです。
この近代化した時代でも「絆」がずっと続いているだけなんですよ(笑)
とても素敵な関係ですね。
絆というものをいかに正しく繋ぎとめて置くことが出来るかどうかが獣医師の役割であると思っています。
誤った結び方をしてしまったり、一方的な結び方をしてしまったりするといつか必ず破綻します。
そうですね。
人間も同じで、恐怖の元で従属させてうまくはいかない。
逆にいくら自分が恋い焦がれたって相手が嫌だって言えばうまくいかない。
その絆があるから動物病院にくるわけです。
その時に、その先生がコミュニケーションもとれない、対応も出来ないってことだと来た人はガッカリするわけです。
その通りです。
ヒューマン&ヒューマンも出来ないなら、人と動物との絆なんて出来るわけがありません。
ヒューマン&ヒューマン・ボンドとヒューマン&アニマル・ボンドの2つを同時に守ってあげなくてはならない。
一番大事なのは、そのご家族の方と動物達の絆なわけですから、それをお守りするために私達、獣医師がいるわけです。
そうあって欲しいです!
小さなお子さんが成長するにあたって、最終的にはその動物の「命を看取る」という大きな試練があるんです。
今の子供達は、触ったことも見たこともなければ、動物は汚いもの怖いものだと親からの洗脳があったりします。
私達の子供の頃はそんなのはなかったんです。
みんな泥んこなんですから(笑)
何もかも抗菌処理されて無菌室で育てられちゃったら世間を渡っていけませんよ。
最高の先生なんですよね、動物は!
野性的で自然的なものを残した動物達。
その動物達と接触を通じて一緒に暮らして喜びを分かち合える人と、何も分からない、コンピュータゲームばっかりしている人が同じ土俵に立った時に、どれだけの差がつくか誰が見ても一目瞭然です。
確かにその通りですね。
イギリスには素敵な諺がありますね!
まさにその諺の通りです。
「子供が生まれたら犬を飼いなさい」という諺の通り、ちょうどその子供が思春期を迎えて大人へ旅立つ時に命を終えるんです。
小さい時には相談相手になるんです。
人間に言えないことをわんちゃんに対して「今日こんなことあってさ」って話すわけです(笑)
答えてくれませんよね。
ただ笑っているだけですよね。でも心が安定するんです!
家族そのものですね!
お年寄りもそうなんです。
わんちゃんの頭を撫でるとス~と血圧が下がるんです。
心臓バイパス手術を受けた方の5年10年の生存率というのは、わんちゃんと同居していた高齢者と同居していない、同居経験がない高齢者では生存率は全然違います。
それは医学的にも立証されています。
動物の力って本当にすごいですね!!
最後に、動物病院の役割とはなんですか?
何か難しい病気をどうこうするのは、私達、病院側の話であって、こんな治療、こんな技術、こんな薬があるっていうのは利用する方達にしたら何のことかチンプンカンプンのことじゃないですか?
はい!全くわかりません。。
「先生!こんな研究結果が出たらしいですね?」って来るわけではないんです(笑)
そんなことを求めているんじゃないんですよ。
もしかしたらこの子と自分の絆が終わってしまうかもしれない!
それに対する危機感であり恐怖心なんです。
その絆を繋ぎあげる為、繋ぎ止める為に私達は努力するんです(笑)
そういうことだと思います。
—————————————————-
犬猫を飼う前に!
保護犬、保護猫を家族に迎えるという選択肢を!
2015月07月病院の情報
病院名 | ジョイ動物病院 |
院長名 | 九鬼 正己院長 |
住所 | 〒158-0084 東京都世田谷区東玉川2-41-16-1F |
最寄り駅 | 東急目黒線 奥沢駅徒歩5分 東急東横線 田園調布駅徒歩7分 |
電話番号 | 03-6425-9977 |
診療時間 | (月・火・木・金・土・日)8:00~12:00 15:00~20:00 緊急:休診日を含め24時間対応可能 *事前に電話連絡ください(Tel:03-6425-9977) 往診:来院が困難な方、動物の移動が困難である場合はご相談下さい。 |
休診日 | 水曜日 |
診療対象動物 | 犬・猫・ウサギ・フェレット・ハムスター・モルモット・鳥 |
その他 | トリミング、ペットホテル、駐車場あり 4台 |
ホームページ | http://joy9.jp/ |
SNS | http://joy9blog.blogspot.jp/ |